2021年5月25日火曜日

2030年、Live Commerce が目指す新しい越境ECのカタチ

デジタルスタジオは6月1日が期初で、第18期目の始まりになります。

私が今から約11年前(2010年当時)に開発したLive Commerceのスローガンであった、多言語・多通貨Eコマースという役割は

1)日本のネットショッピングを楽しくする、進化させること。
⇒新しく生まれた技術やアイディアをできる限り早い段階で企画してショッピングカートに実装し、オープンソースで配布する。
これによりLive Commerceにかかわる全てのユーザー(商品の消費者、商品の生産者、サイトの運営者)を幸せにする。

2)進化し続けるECサイト構築プラットホームにすること。
⇒自動アップグレード機能によって、最強で最新のEコマースを誰でも利用できるようにする。

3)メジャーなあらゆるデバイスからアクセスできるようにする。
⇒インターネットにつながったあらゆる端末からLive Commerceを通じてネットショッピングできるようにする。具体的には携帯電話、iPhoneなど。

4)あらゆる言語/地域でネットショピングできるようにする。
⇒4言語でスタートしたLive Commerceをあらゆる地域と言語で使えるようにシステムのローカライズに投資をする。
インターネットのメリットを最大限活用する。

5)パートナーを大切にする
⇒Live Commerce単体ではECサイトのプラットフォームに過ぎず、機能不十分と考えており、外部のEC系サードパーティー製品との統合によって、今までにない新しい市場を作り出し、パートナーと共に未来をを創造する。


ということなのですが、これが11年経過した2021年現在では、ほぼすべての項目が実現されており、特に「あらゆる言語/地域でネットショピングできるようにする。」という根幹をなす部分については、Discovery Japan Mallで既に100カ国以上の国々から注文もいただいていますし、売上も当社が管理する越境ECサイト全体では月商5億円に達するなど、11年前に掲げたスローガンは達成したと断言してもよいと思います。

Live Commerceが誕生して既に累計1000社以上のユーザーに支持・利用されたEコマースは、当初の役割を終え、次のステージに進む時期だと決意しました。

過去11年間が越境ECというビジネスモデルの導入を啓蒙した時期とすれば、これから先の10年はもう答えはでています。

本日の投稿では、次の10年、Live Commerceが解決すべき社会的な課題を自分なりの言葉で示したいと思います。

2030年、越境ECは「事業」になる

2000年代初頭、インターネットビジネスの導入と同じくして、多くの企業はネットショッピングの導入を一斉に開始しました。まさにこの時期は様々なテクノロジーやルールが整備された導入期でした。そして2010年になるとネットショップを持つこと自体は当たり前となり、2021年の現在では、ネットショップを立ち上げること自体は既に低価格、また安全な環境が整いつつあります。

言い換えれば、国内でのネットショッピング環境の変化と同じ変化が、越境ECにも来るものだと思っていますし、むしろ当社がその先頭をリードすべき存在であると感じています。

越境EC導入期はいろいろなルールが整備されていないがために、ビジネスといっても「ギャンブル」の要素が強かったということです。何が正しくて何が間違っているのか? どの業者も手探りで行なっていたのが2010年から2020年の10年間であったような気がします。

例えば、決済1つをとっても、多通貨決済にすべきか、単一通貨決済にすべきか、どちらがより高いコンバージョンとなるか、2010年当初は多通貨決済がよいものだと信じ込んでおりました。多通貨決済の方がユーザー自国の通貨で価格が表示されるため、親しみがあると考えていたためです。しかし、実際には多通貨表記は広告には必要であっても、ECサイトでは決済時点では単一通貨表記で多通貨表記はAPIを開始て参考価格を提示すれば十分であることが分かりました。

ペイジェント、GMOペイメント、NTTデータ、他さまざまな決済ソリューションの台頭した時期でもあったと思いますが、当社もいろいろなソリューションを使い、API連携などシステム面からも統合した結果、越境ECのスタンダードはStripe一択になりました。2021年現在ではStripeが圧倒的に使い勝手、統合の手間、チャージバック・未然の不正決済を防ぐ機械学習機能、、など世界を相手にするというケースでは国内の決済サービス業者の数年先はいっていると思います。

伝統工芸品なる地方創生で越境ECに挑戦する企業も多かったと思います。しかし、例外なく伝統工芸品で事業になった越境ECサイトは皆無であり、一方でポケモンや中古ブランド品、嗜好品はそれほどのマーケティング活動に力を入れなくても、英語によるウェブサイトを立ち上げただけでも多くの反響がありました。これに気づかない事業者は未だに伝統工芸品なる商材が売れるものだと信じ込んでいます。(くれぐれも業者に騙されないでください。越境ECで売れる商品ジャンルは決まっています。)

その他にも、Fedexの送料の方がEMSよりも安く、配達時間に関しても圧倒的に早いことも最近分かったことです。(現在、Live CommerceはFedexが標準の配送方法になっています)

また、決済のチャージバックを防ぐ方法、不正決済を防ぐ方法、カスタマーサポートで多い質問のカテゴリ、、、など考えれば沢山思いつきますが、こうした越境ECというものを事業として実践したからこそ得られた「知見」が今私たちの会社は日本で一番多く持っていると自負しています。

これらの「知見」と自ら越境ECサイトを自社運営し、海外マーケティングから、物流の連携、実際に従業員が梱包してFedexの配達員に商品を受け渡しするところまで、つまり川上から川下までの業務を外注なしにすべて自社一貫して行ったことによる失敗・成功の両体験を得ることができました。これこそが、この10年で私たちの会社が得た新たなノウハウです。

この「ノウハウ」をベースに越境ECを運営すれば、2010年当時とは比べ物にならないほど、越境ECは「ギャンブル」から「事業」に変わる過渡期であると言えます。いわば次の10年は越境ECは導入期を終了し、こうした知見に裏付けされたノウハウによって企業にとってはキャッシングマシーンとなる第2、第3の「事業」として確立していく時期に差し掛かるものだと考えています。

越境ECは利益率30%超の高利益をただき出す事業になる

私たちが運営する越境ECサイトでは、送料を除く商品だけの利益率は平均26%です。この他に国際送料で平均約10%の送料利益を確保しています。このロジックは、国際送料の計算式のベースとなる3辺計の容積重量を取引毎に圧縮梱包することにより、1円でも安く送料を抑える努力によって成り立っています。一般に考えて、通過型物流における物流センターの役割は、一時保管と出荷が主な機能ですが、自社物流でやっているため、メーカーから送られてきた商品を自社ノウハウによって再梱包し、容積重量を抑えることにより、これが毎月500件、1000件、、ともなれば、送料の請求額は明らかに変わってきます。これが送料10%利益のロジックです。

しかし、再梱包は梱包資材の工作をするようなもので、こんな手間のかかる作業を物流センターに依頼すれば、1梱包当たりの作業費で少なくとも500円程度は請求されるため、大手物流センターでは全くもって現実的ではありません。こうした大手ができない手間のかかる部分は、まだまだ改善の余地のある分野です。

その結果、1取引当たりの利益は平均して30%を超えます。例えば売上1,000万の越境ECサイトで、広告費100万、運営費(CS・物流)40万の費用に対して残るお金はは約160万ということです。この費用から梱包資材の経費、カード決済手数料を差し引いたとしても150万は十分確保できます。

上記は大雑把に計算した例ですが、これは月商1億円になると運営費自体は対して変わらないため、さらに利益率は改善されます。

過去10年の知見、そしてこれらの10年先を見越してLive Commerceという越境ECソリューションが目指すべきことは以下のスローガンに集約されると思います。

月商1億円を超える越境EC事業を100個作る 

これが当社が考える2030年までのロードマップです。イメージとしては1事業1業種みたいな感じです。例えば化粧品メーカーであればバッティングしないカテゴリで1事業単位で月商1億円を稼ぎ出すキャッシングマシーンをデジタルスタジオがメーカーとコラボしながらプロデュースするということです。

月商1億円に達するためには、売上だけでなく、関税支払い逃れという痛い課題にもこれからは向き合っていくことになります。これは、越境ECという事業の特性上、国を超えたモノの取引には必ず必要となる関税と各国の消費税(付加価値税)を一部のユーザーは払わない、拒否するというケースが一定数あります。

関税拒否となると、荷送人(送り主)にその費用が請求され、また現地から日本までの戻しの国際送料、加えてまれに荷送人から見た場合、輸入品となるため、消費税の支払いをしなければならないこともあります。これは最悪のケースですが、このリスクに対する関税逃れ保険のような商品は存在しません。

つまり、越境ECを事業者・消費者の双方にとって安全で便利な市場にするためには、この関税の支払い拒否を未然に防ぐ仕組みの構築が急務になってきます。当社はこの関税支払いの仕組を既にLive Commerceに一部取り入れ始めており、消費者はチェックアウト時に関税の前払い・または受け取り時の後払いを選べることができるようになります。これによって関税のトラブルに関するリスクが一気に下がり、越境ECがビジネスとして安全に取引できる環境に一歩前進します。

関税の事前払いを要求すれば、「コンバージョン率が下がるのではないか?」という懸念を抱く人もいますが、そもそも関税を払う意思の低いリテラシー層の消費者を相手にするよりは、しっかり関税の意思のあるユーザーと多くの取引をした方が長期的に見ればビジネスでどちらが伸長するかは明らかだと思います。

まとめると、以下のようなスローガンを掲げたいと思っています。

1,月商1億円を超える事業を100個作る
月商1億円を達成することのできる業種は限られています。逆を言えば、どの業種でも達成できるわけではありません。越境ECを通じて、世界の多くの消費者に日本を伝えられるようなビジネスを作るということです。

2,越境ECで発生しうる国際間の係争をなくす仕組みをIT技術で解決する
関税支払い逃れ、物流遅延、不正決済、言語の壁、、こうしたまだまだ解決しなければならない多くの課題をIT技術で解決し、より安全なビジネス環境を提供したいと思っています。

3,教育機関を通じて、こうした人材育成に貢献する
私の目標になっていますが、大学などの教育機関のカリキュラムにこうした越境ECを運営できる人材の輩出はこの先の日本にとって、必要不可欠になる日が来ると信じています。これは当社のソリューションに限ったことではありませんが、その人材育成に当社が協力することです。大学の教育カリキュラムにいずれは当社の名前が掲載されることができれば、これほどうれしいことはありません。

そして、4つ目が物流センターです。
私が今、温めている事業の1つです。

4,海外出荷専門の物流センターを作る
海外出荷に特化した物流センターを数年以内に立ち上げ、最初は小さいながらも中小企業であるが故のフットワークの軽さを生かした、大手にはできない物流センターを機能させる予定です。



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